後編を書くつもりが田沼意次が好きになりすぎて、もそっと意次の知られざる功績を称えたくなったので、クーデターで失脚させられちゃう前に中編を挟ませてくだしゃんせ。
だって意次ってば、とうとう老中にまで登り詰めて、これ以上の出世はないゆーのに、まだまだ国のために頑張る気、満々なんだもの。いや、むしろ老中になったこっからが本番だぜっ！くらいのテンションなんだもん。オッキー（意次）ファンとしては、推しの頑張りを世に広めてあげたいじゃない？ 推しを独り占めするんじゃなくて、たくさんの人に愛されるように応援してあげる、それが正しい推し活の姿だとアタシ思うの！（女性化してしまいました）
＜ オッキーには大きな夢があったんダヨ！ ＞
オッキーにとって出世は目的でなく手段。徳川の世のため、国を良くするために己が能力を捧げる志が原動力だから、賄賂も相手が渡したいなら受け取るけど、決してそれで私服を肥やしたりせず、困ってる人とか有能な人を起用することに使っちゃうの。それで平賀源内とか、杉田玄白とか、最上徳内とかの有力者をサポートしながら重用しちゃうワケ。
なぜなら、これまで「重商主義」で色々と幕府が儲かるナイスな作戦やってきたけど、彼の中でそれらも焼石に水だって分かってたから。もっと根本的な赤字体質を解決して、幕府をしっかり建て直したかったのね。みんなその場凌ぎで保身ばっかのこの時代、真面目にこの国の将来のことを考えてたのはオッキーだけだったんダゾ！
根本的な建て直しは、江戸城の中でうんうん唸ってるだけじゃムリ。だから民間の有能な人らと交流を重ねてヒントを得る。で、実際に得たの。これを成し遂げれば幕府は立ち直る！どころか更に強く豊かな国になれる！って道を。途方もない壮大な計画だけど、老中になった今なら不可能じゃない。よっしゃ死ぬまでに絶対やってやる！って、オッキーは大きな夢の実現のために動き出した。キャー素敵！
＜ 夢その① 印旛沼（いんばぬま）の開拓 ＞
印旛沼とは千葉県北部に広がる広大な沼地。この沼の水を、長い水路を引いて千葉南部の江戸湾まで流し、沼地を干拓して広い新田を作っちゃお！という計画。この計画がスゴイのは、関東の米の収穫量が上がるだけでなく、引いた水路が江戸から印旛沼を経て、利根川まで繋がるから、水運が驚くほど便利になるトコロ。
例えば江戸から銚子、仙台方面まで船を出すとしたら、東京湾を南から出て房総半島をぐるりと回らなくても、水路を通って陸地の中を横切ることができちゃう。時間も燃料コストも大幅に短縮される上に、房総半島を回るルートは国内屈指の海難事故の多い危険地帯だし、船の遭難被害のリスクも大幅に軽減される。この水路が交通運輸網として使われるようになれば、とてつもない経済効果が期待できるってワケ。
しかも、新田開発できた後の利権は、幕府と地元民と出資者の3者で3分割しよね！♪ って決めて、失敗したら老中を降りる覚悟を示しながら豪商に出資をお願いするオッキー。「今をトキメク田沼様から、そこまでのお覚悟で私にオファーくださるならば、これはもう失敗して大損したとしても、誉れッス！！」と出資を引き受ける豪商。さすが普段の人徳や信用力が数ケタ違うね！
＜ 夢その② 蝦夷地（えぞち）の開拓 ＞
当時の北海道は、南部の一部だけを松前藩が支配してたけど、残りはアイヌ民族が住んでて未開拓。そこへ最近、ロシア船が降りて来て「貿易しよーぜ」とか言ってるらしい噂を耳にしたオッキー。とりあえず蝦夷地の実態を調べるため、最上徳内とか民間人の調査隊を派遣。したら「蝦夷地も新田開発できますぜ！」と分かる。
松前藩がブーブー言うだろうけど、そこは自分が何とかするとして。こちらも新田開発するだけでなく「むしろ港を作ってロシアと貿易始めれば、長崎で流出しまくった銀をロシアから取り戻せるじゃん」と気付く。かつ、これを機にこれまで鎖国してたせいで世界を知らない日本を、やがて開国する路線に乗せられる。てか開国に向けて動き出さなきゃ、そのうちロシアのみならず諸外国の侵略が始まるだろし。いつやるの？今でしょ！と、そこまで見越しちゃうオッキーてば天才！
蝦夷地の調査を通じ、江戸開港の未来をイメージしながら、オランダ船を借りてコピーした船を作って日本人水夫の育成まで始めていたことが、最近の研究では判明してきてるんだって。ペリー来航よりざっくり100年も前にだよ？ 神過ぎない！？
＜ 夢その③ 全国幕領化計画 ＞
そもそも家康が作った幕藩体制に根本的欠陥があんのよ。各藩に課税できないせいで幕府は赤字体質なワケ。だし「お手伝い普請」とか「災害時の復興支援税」とかやってるけど、もはや苦肉の策なのよね。しかも、どの藩も赤字だから嫌がるし。。ん？ 待てよ？ どの藩も米経済が貨幣経済に負けて赤字経営、つまり商人から借金してたりする現状。。 ならば、幕府が各藩に金を貸してやるシステムを作ったらどうだろう？
普通、大金を借りる場合は土地や建物の担保がいるわけで。で、お金が返せなければ担保を取られるのが道理。これを幕府と藩でやった場合、返済できなければ藩の領地を召し上げられる。その分だけ税も増える。藩は藩で、これが罠だと分かっていても赤字で大ピンチだから背に腹はかえられぬ。特に薩摩藩なんてボロボロだし、必ず借金に手を出すに違いない。頑張って返済できれば、それもまた良し。どちらにせよ幕府に損はない。各藩が財政難にあえいでる今こそチャーンス！
と考えたオッキーは、この借金システムを正式リリース。罠に気付いた諸大名は憤ったけども、表向きは「公儀が藩を助ける措置」とされてるし、下手に反発できない。なにせ相手は田沼意次。文句を言えば違う形で逆襲（お手伝い普請攻撃とか）されるかもしれないわけで。もちろんオッキーはそこまで計算づく。後は、獲物がエサに食い付くのを待つだけよ。オッキーのちょっとダークなこんな一面もまた魅力だよネ！ でも、すべては幕府財政の矛盾解決のためだもんっ。
と、これだけの大プロジェクトを動かし始めたオッキーでしたが、ここで悲しいお知らせがあります。運の悪いことに、そんなオッキーに天の悪戯が次々と降り注いじゃうのです。。
不運① 浅間山の大噴火
火山に文句言っても仕方ないけど、この時の噴煙は成層圏にまで達し、関東一円に大量の軽石や火山灰が降り注いだらしく、超〜迷惑！ この年はアイスランドでも巨大噴火が起こり、浅間山噴火とあいまって大量の火山灰が北半球を覆ったせいで世界的な低温・凶作が起こり、天明飢饉だけでなくフランス革命の遠因にもなったと考えられているんだって。何その地球規模の大迷惑。引くわ〜！
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/天明大噴火
不運② 天明の大飢饉
もともとの冷害に加えて、噴火による日照不足も重なって農作物が壊滅。大飢饉になって死んだ人の肉を食べるほどの地獄絵図だったとか。必然的に江戸や大阪でも米屋への打ち壊しは起きるわ、疫病も流行るわで、オッキーも救済に大あらわ。全国的に90万人くらい亡くなったって、ドン引きなんですけど。なんなのよーもう！
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/天明の大飢饉
不運③ 前代未聞の集中豪雨
飢饉も収まってホッとしてたら今度は大雨。バケツをひっくり返したようなドシャ降りが数日間続いたせいで、まだ残ってる浅間山大噴火の灰や砂があらゆる川で詰まって氾濫させて、せっかく3分の2くらい進んでた印旛沼の工事までパァよパァ！ さすがにこれにはみんなガックシで立ち直れないよ。。てか印旛沼って ↑ この写真みたく現代でもこんな状況で、謎の怪獣事件 ↓ まであるらしく、もう呪われた土地としか思えないじゃん。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/印旛沼の怪獣
おかげで、オッキーの夢の事業はことごとく頓挫しちゃって、それどころじゃない状況に。こうなると昔の人って「〇〇の悪政に天が怒ってるんじゃ！」と言いがちで。その時代のリーダーだったオッキーが矢面に立たされちゃうワケ。各藩への借金システムもあとちょっとでみんな食い付いたのに、被災地救済で幕府のお金も減りまくりで、よそに貸してる場合じゃなくなっちゃう〜。トホホ〜泣。
しかも、このピンチを利用してオッキーを追い落とそうと目論む悪い奴が、いよいよ動き出してくる。いやー！ なんなのーこの展開！？ 笑っちゃうほど最悪なんですけど！ こんなことある？ 敵は天候を操れる能力者か何かですか？ 浅間山噴火のせいでフランスにまで影響して、マリーアントワネットも首切られちゃうんですけど。能力すさまじすぎない？
こんな天変地異さえ無ければ、オッキーはきっと幕府と日本の未来を変える改革を成し遂げてくれたハズなのに。。神様のバカ！ いじわるっ！！ これで日本は外国より100年遅れることになるんだからね。特に蝦夷地でロシアとの交流が無事に始まっていたら、北方領土問題もこの時点で解決してただろし、ヨーロッパの産業革命にもリアルタイムで触れられて、明治維新を待たずに近代国家に生まれ変わってたはずなのにぃ〜！！
はぁ。。マジ運命の分かれ目だよココ。もしかしてアレかな、このままだとオッキー率いる日本が世界征服しちゃう歴史を、未来人が災害攻撃で止めに来たのかな。あの天才田沼を今のうちに潰しておかないと！って。
ってことで、嘘みたいにわざとらしい災害3連コンボをお見舞いされて、さすがのオッキーも大打撃。ここから失脚までの流れは後編で勝手にやってくださいっ。アタシはオッキーの描いた夢と共にここで消えるね。。アタシのことは忘れても、オッキーの努力は忘れてないであげてネッ！
それじゃ次回からまた普通のおじさんに戻りますw
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