vol.11「春日局」と「家光」について

このまま歴代将軍を順に追ってゆくことにする。さすればおのずと江戸時代の出来事や、文化の流れも見えてくるであろってことで、3代目「家光」である。で、家光と言えば「春日局」である。

後に春日局となる乳母「お福」が、兄の竹千代より弟の国松ばっかり可愛がるお江に危機感を感じて、駿府まで行って、大御所家康に直訴した、って逸話は有名ですな。これが創作話かどうかは、まあ気にしないどいて。国松びいきだったのは事実の様子。その理由として、竹千代は病弱でぶさいく吃音ありの陰キャ、国松は信長似の美形でハキハキ陽キャだったから、と言うのが定説になっとりますね。

けども、私としては昔観たドラマ『大奥』で盛り込まれていた要素がもっとも腑に落ちまして。お江はせっかく待望の男児を出産したのに、産み落とした瞬間から乳母(お福)に子供を取り上げられてしまい、抱かせてももらえなかった。その後も、病弱な竹千代の世話を甲斐甲斐しくするのはお福の役目。竹千代もお福に懐いてて、お江を怖がる始末。そりゃお江も悔しいに決まってる。


なので、次に生んだ男児は、乳母は付けるものの自分の側に置いて可愛がる。無愛想で自分に懐かない兄と、愛嬌たっぷりで自分に甘えてくる弟だと、ついつい自然に偏愛しちゃうわけで。別に兄を無下にしてるわけじゃないんだけど。。という要素がドラマでは実にリアルだったので、妙に納得させられた覚えがあるのです。

ちなみにこれ ↓ は最近読んだ『徳川秀忠と妻お江』で初めて知ったのだが、なんと竹千代くん、国松びいきを気に病んで、自殺未遂したことがあったそうな。そこまで思い詰めてたとは知らなんだ。で、お福が命をかけて直訴に走ると。


それから周知の通り、直訴を受けたグランパ家康が、孫におやつをあげる順序で「長幼の序」を示し、お江にも「弟甘やかしちゃダメでしょがレター」を送り、竹千代=家光が3代目に無事当確となる。もしグランパが長生きしててくれなかったら、おそらく世継ぎ争いで徳川家は分裂していたかもしれない(実際あと数年で家康死ぬし危ないとこ)。

やがてお福は家光と共に権力者「春日局」となり、大奥のルールやシステムを構築する。その秩序と規律のおかげで、大きな世継ぎ争いなく15代目まで徳川の世が続いてゆくってんだから、お福はまさに江戸時代の立役者の一人と言える。

ちなみに、国松から成長した「忠長」は、やっぱすげえヤバい奴になってて、最終的には父ちゃん秀忠からも勘当され、家光から切腹を命じられてる。その乱れ具合がパない ↓  統合失調症かもだとか。

しかも「実は家光を産んだのは、お江ではなく、お福だったんじゃないか説」もある。もしこれが真実だったとしたら、国松君が狂っていったのも頷ける。うーむ、急にどんでん返しの闇深ミステリー。。


謎はすべて解けないので見なかったことにして、家光の政策に移ろう。

家光はいわゆる「武断政治」の総仕上げで「参勤交代」と「鎖国令」をブチ立てます。この鎖国令に関しては、キリシタンの取り締まりが目的で、父ちゃん秀忠、爺ちゃん家康のキリシタン禁令を踏襲しとるわけだが、何でそんなに踏み絵までさせてキリスト教を排除しないとならなんだかー言うと、そのきっかけは豊臣秀吉の「九州平定」にまで遡る。

なんと奴らは日本を侵略しようとしてた!らしい。それにいち早く気づいた秀吉が、それまでのキリシタン保護政策を一転させ「バテレン追放令」を出す。↓ 詳しくはこちら

で案の定、しつこくキリシタンやってる洗脳民が「寛永の大飢饉」の影響もあって、天草四郎を筆頭に「島原の乱」を起こす。史上最大の一揆であったが、これを(前に秀忠に袋づめにされてたけど)成長して家光の六人衆まで出世した「知恵伊豆」こと「松平伊豆守信綱」が、兵糧攻めからの総攻撃で見事に鎮圧。だからやっぱキリシタンはやべーってばよ!てことで、鎖国強化しまくるしかないって話。

そこで、唯一オランダだけはカトリックと違って布教を前提としないプロテスタントだったから「貿易だけしましょ」ってなり、他国の品もオランダ経由で輸入継続。あとは島原の乱で、空き屋ならぬ空き城だった原城に立て篭もられたのを教訓に「一国一城で使わなくなった城は残してないで全部ぶっ壊しとけ!」と解体を進めて、これにてようやく「徳川幕府に死角なし」てとこまでやって、長男の「家綱」に4代目を譲ってから病死する家光。

家光の後追いで、堀田正盛、阿部重次、内田正信ら側近が殉死(後追い自殺)しているが、知恵伊豆信綱らは「生きて遺志を受け継ぎ守る方が大事!」と、そのまま4代目家綱を支えるのであった。とさ。


と言うことで「徳川ザ・ムービー 武断政治編 3部作」が、これにて完結。この時代は、徳川のみならず、豊臣や、織田、浅井の血がまだ入り混じってるので観応え満点。ちなみに春日局も明智光秀の家臣の娘だし。ともかく、これで戦国時代がめでたく完全終了し、真の江戸時代に突入することで、次から「文治政治編」がスタートする。ようやく本来の主旨である町人文化に焦点を当てられそう。なっがいプロローグだったわあ。

一般社団法人 江戸町人文化芸術研究所

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