(※この記事は2023年内に書いたもので、まさか新年早々に地震が起きるとは夢にも思わず、内容的にタイミング悪くて申し訳ございません。災害や事故で亡くなられた方々のご冥福をお祈りします)
富士山の絵で正月感を装ってみたものの、怒ってるので縁起は良くありません。本ブログ2024年1発目のテーマは、5代目綱吉の時代を締めくくる特大イベント「1707宝永大噴火」についてです。
なんせあの富士山が数百年ぶりに噴火するのだから、ウルトラバッドサプライズである。溶岩の流下は無かったようだが、大爆発により焼けた砂が関東一円に降り注ぎ、江戸にまで届いたとか。焼け砂が1m〜3mも積もった地域では、田んぼが埋まって大ピンチ。このままでは耕作不能で、村ごと全員餓死するのも時間の問題。
そりゃ「綱吉公の悪政のせいで天が怒っとるんじゃ!」とか言われても仕方ない。実際この2年後に綱吉は引退し、6代目を「家宣(いえのぶ)」に譲っている。そのへんの綱吉の最後と、宝永大噴火との関連性が気になってこの本を読んでみたところ。。(以下ネタバレ注意)
むっちゃ疲れた。。
作者自身も、あとがきに「疲れた」って書いてるくらい、一筋縄ではゆかない話であった。噴火事件そのものより、事後処理を巡る幕府内での権力闘争がひどい。降り積もった焼け砂によって、壊滅的被害を受けた地域では食糧が底をつき、何千人もが餓死寸前だと言うのに、これを政争の具にした役人同士が、互いの足を引っ張り合い、なかなか現場に救済の手が差し伸べられない。
そんな中、かつて家康に命ぜられ、利根川東遷を見事成し遂げた「伊奈忠次(いな ただつぐ)」の子孫「伊奈半左衛門(いな はんざえもん)」が農民を飢えから救うべく、官僚らの政治ゲームに巻き込まれつつも、被災地復興に全力を尽くすのだが。。。
あらすじはこんな感じ。本編も読み切ってしまえば実に面白かったのだが、読んでる最中はとにかく、つらい。ムカつく場面が多すぎる。
● 老中・大久保忠増(おおくぼ ただます)
● 5代目将軍・綱吉
● 側用人・柳沢吉保(やなぎさわ よしやす)
● 勘定奉行・荻原重秀(おぎわら しげひで)
● 6代目将軍・家宣
● 側用人・間部詮房(まなべ あきふさ)
● 儒学者・新井白石(あらい はくせき)
● 普請代官・伊奈半左衛門(いな はんざえもん)
と言うことで、主人公しか善人がいない(大袈裟に言うとだが)。けど、これが現実なんだろうなと。離れた被災地のことなんて誰も真剣に考えやしない。考えるのは、それを如何に利用してやるかばかりで、なんか現代の福島原発事故もそんな感じだよなと思ってしまう。復興税とやらも絶対他のことに使ってるだろうし、全く同じ構図である。
所々で語られる被災地農民たちのエピソードが、また哀れでやるせない。住み慣れた故郷から離れたくないが、とどまれども餓死が待っているだけ。やむなく他の土地で仕事を探すが、やくざに借金で絡め取られて、女は女郎に、男は労働にと、死ぬまで抜け出せない奴隷生活を強いられる。
それを半左衛門が命を賭して救ったという話は「伝説」とされているが、それまでは村人から全然動いてくれない役人への嘆願書が山ほど残されているのに対し、半左衛門の死後は、ピタッと嘆願書の提出が止まったのは事実らしい。つまり幕府が重い腰を上げて救済に乗り出したと。半左衛門の死が、家宣や間部詮房や新井白石の新政権を動かしたと。なんてヒーローなんだ半左衛門っ!
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/伊奈忠順
ちなみに、金の出し渋りをしていた荻原重秀は、新井白石との権力バトルで敗戦濃厚になると「新井白石のような学者に経済を任せたら必ずや国が傾く。だから今のうちに被災地に米を届けてやれ」と、半左衛門に非公式な書類作戦を提案&加担。最後に新政権に対して一矢報いてから、失脚してゆく。ラストで敵が主人公を助けてくれるパターンのやつや。
● 実際、新井白石に問題視された荻原重秀の改鋳は、今や「大江戸リフレーション(通貨膨張)政策」と評価され、新井白石が強硬に推進した良貨政策以降の経済停滞は「白石デフレ」と呼ばれており、荻原重秀の正しさが証明されている。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/荻原重秀
綱吉&柳沢吉保の最後はあっさりだったが、荻原重秀VS新井白石のバトルはこってりだった。被災地はドロドロ系で、役人らは煮ても焼いても食えたもんじゃない。けれど半左衛門という気高いスパイスのおかげで、時間はかかっが何とか無事に災害処理が軌道に乗って、良かった、良かった。
そして、半左衛門の「代官は決して民を見捨ててはならぬ。また、民から見捨てられてもならぬ」という言葉が、カッコ良かった。ドラマ化しよう。映像化すべきだもの。主役は堺雅人で。荻原重秀は香川照之で。無理かw
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